義勇軍がウインド砂丘を訪れる2年程前(帝国暦20年頃)からウインド砂丘のハイハンドラ城に現れた黒いローブの男(リッチ?)と、トリスタン皇子に似た、虚ろな瞳をした男爵は、ゴーレムを作り出して各地の町にばら撒きはじめた。しかし、そのゴーレムが襲うのは、その後侵攻した義勇軍一行のみで、町の人間に危害を加えることはなく、住民が恐がっていた以外は、それほど生活に支障はなかったらしい。
また、彼らは闇の騎士バルドルの配下でもあり、ゼテギネア帝国を倒して、再び王とすると言ってゼノビアの王族を探していたらしい。
ゴーレムを作り出し、死体を操る黒いローブの者たちだが、教会の神父達は、彼らが別の物から人を作り出したり、死体を蘇らせるような人間の力の及ばぬ力を手にしているのではないかと、感じ取っていたようである。
まず、男爵について、トリスタンに似ている者がいるとすれば、トリスタン本人の他、トリスタンの兄であるジャン王子と父親であるグラン王が考えられる。死者を甦らせる術を手にしているとすれば、グラン王とも考えられるが、ここでは後に述べる理由からジャン王子、少なくともジャン王子を受け継ぐ者であると考える。
ジャン王子について分かっている事は、(外伝スタートの)15年前(帝国暦前1年)、魔導師ラシュディがグラン王を暗殺した際に共に殺害されたと思われる、ということだけである。
(ちなみに、某攻略本にのみジャン王子の戴冠式においてその事件が起ったとされているが、グラン王が暗殺されたと言うことは、王は未だ存命であり、暗殺する価値がある状態、つまり高齢の為に衰えてはいただろうが、王として君臨しうる状態にあったと思われる。更に、当時ジャン王子は、僅か4歳と考えられている。ならば、戴冠ではなく、皇太子となる立太子の儀式であったのではないだろうか。)
同じく殺されたと思われていたトリスタン皇子とフローラン王妃も生き延びていたことから、ジャン王子も生きていたとも思えるが、老王の長男であるジャン王子は儀式の主役と言うべき存在であり、おそらくその場で殺害されたのではないだろうか。
ジャン王子の肉体、あるいは精神の一部か遺伝情報を手に入れた黒いローブの者たちは、ゴーレム生成の技術や死霊魔術を応用し、ジャン王子と同様の存在を作り上げることに成功する。(意思能力や言語、記憶に障害があるように見えるが、ヴァレリアのデスナイトも年月を経るに従って、それらの能力を徐々に回復しているので、おそらく回復には時間を要するのだろう。滅びの間際に何かを思い出したような台詞を残しているのも、デスナイトが死の間際に生前の記憶を取り戻したのと同じと考えられる)
次男であるトリスタンの行方がどうあれ、グラン王の長男という血統と高い戦闘能力を示せば、旧勢力を統合する要としては十分な存在である。本人の瞳が多少虚ろであろうとも、先の事件において強烈なショックを受けているということで理由付けし、能力ある側近がそれを支える形をとれば、血統を重んじるゼテギネア世界において、反帝国の軍を決起するのも不可能ではない。現に、この10年後、身元も分からない男に支えられて、旧王国の皇子は帝国を滅ぼし、新たな王国を作り上げているのだ…。
今回、英雄デスティンの役割を担うのは、強力なカリスマと力を持った闇の騎士バルドルである。
冥界に落ちた彼は、死亡したジャン王子を、神に近い存在が持つ強大な魔力と知識を利用して再生を始め、彼に高い戦闘能力を与えるべく準備すると、もう一人の皇子が成長するのを待った。
事件から十数年後、時が満ちたと判断した彼は、自ら高い魔力とそのカリスマを使って地上に勢力を拡大、死霊魔術に長けた者や、社会から追われた者を使って、反乱決起と新王国建国の資金を集めると同時に、生き延びていた皇子を誘き寄せるべく画策する。場合によっては、計画をジャンではなくトリスタンによって遂行しようと考えていたのだろう。
一方、トリスタン皇子が妖術師ジェンガ(彼が人間であったのかどうかも謎である。人間を蔑視するような口調から、闇に属する者とも考えられる。)を倒したことで、その実力を認めたバルドルは、戦乱の中心となる湖北岸を避けてウインド砂丘にジャンを送り、最後の調整を図った。更に、キロスを倒したことで、トリスタンはバルドルによってジャンに変わる新王となる資格を認められ、ウインド砂丘への道が開かれたと考えられる。
次に闇の騎士バルドルについてだが、バルドルはグラン王であったのではないだろうか。
戦友ラシュディの突然の襲撃により、愛息と自らの王国、生命を失ったグランは、ドルガルア王のように自らの存在にではなく、自らの王国や子孫への妄執から、復讐と再興のために魔界の力を得る。英雄としての高い能力と神帝の強力なカリスマをそのまま受け継いだグランは、闇の騎士バルドルを名乗ると、現世との強い繋がりを生かして再び地上に現れる(ダークエレメント・ドルガルアと空鎧ガレスの合わさったような存在と考えれば、イメージし易いだろうか)。トリスタン皇子の存在を感じ取ったのは、その血の繋がりからだと考えられるだろう。
また、同時に反帝国を掲げることは、かつての友人でありながら、自分を裏切って死に至らしめた魔導師ラシュディとの対立を意味することになる。自らの作戦に妖星のゼーダ(ゴーゴン)や半神ダニカなど魔界そのものの力を借りて、世界を滅亡、あるいは全く変えようとしているラシュディと異なり、バルドルはこだま(リッチ)、ジェンガ(ネクロマンサー)といった死者の力を借り、その理想世界として争いの無い静寂の世界を掲げている。これはつまり、魔界の地上侵攻作戦における反ラシュディ派、あるいは、魔族の世界において、デムンザ率いる魔界によって統合された(?)冥界派とも言うべき存在であったと考えられる。
後は、上の通り。「男爵」をジャン王子だとしたのは、グラン王とした場合、グランが男爵とバルドルという二者が同時に存在してしまい、それぞれの存在に無理が生じると思われたので避けたため。
全てのEDを確認していないので分からないが、CルートN・EDでは、バルドルは、トリスタンに忠告を残して、大人しく闇の世界に消えている。トリスタンの能力を真に認めたと言うことなのではだろうか。
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